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切断芸術とは何か?

この展覧会の背景には、日本の社会が一億総中流の時代から、階級分解して、上流と、下流に分裂してきているという現在の時代と深く関わってきています。

 

この中流階級の崩壊は、日本社会だけでは無くて、アメリカでも、イギリスでも、そしてフランスでも起きている世界規模の社会変動です。このために、世界各国の既成の政党が選挙では支持を失って、トランプや、フランスのマクロンのような異端の政治家や、ポピュリズムの政治家が台頭してきていますが、同じ現象が《芸術》の世界でも起きているのです。

《切断芸術》というのは、画面を二つに切って、それを上下、あるいは左右に入れ替えるといった手法をとっています。

 

さて、そのことを芸術上の問題で言うと、芸術作品を一つのモノとしてとらえること自体の崩壊の現象というものと連動しているかもしれません。ジェフ・クーンズは、シリーズで美術作品をつくる必要を強調していますが、今日では、一点の作品では無くて、少なくとも6~7点のシリーズで作品を考える必要が生まれているのです。

 

お母さんのお腹の中にある卵子は、単細胞です。そこにお父さんの精子が突入して、受精すると、細胞は2つに分裂します。分裂することは、多細胞生物への成長のためには重要なのです。今日、モダンアートの時代は、はるか前に終わりました。だとすればモダンアートは完成した一つの卵です。それを切って割る。切断することで、次の新しい多細胞生物への成長が始まります。切断して、何が始まるのでしょうか? この場合、今日の受精は「多胎児」、あるいはスーパーツインズ (supertwins)という3つ子以上の受精と出産になってきていることを考える必要があるのです。

 

 

一つは絵画が彫刻になり、彫刻が絵画になるという転倒が起きるのです。丁度、今日の女性が男になり、男が女性になったような現象が社会的に起きていますが、似たことが《芸術》にも起きています。つまり平面なのに《原-彫刻》《彫刻》《反-彫刻》《非-彫刻》《無-彫刻》である作品が生まれています。

 

同様に《原-絵画》《絵画》《反-絵画》《非-絵画》《無-絵画》の概念階梯のある立体作品もつくられています。

 

《芸術》には一階建ての平屋と、二階建ての芸術がありました。それが、三階建ての建築、四階建ての建築のような《芸術》が、出て来たのがモダンアートです。切断をすると、さらに10階建てのような高層の《芸術》が出現してきているというのが、今日の『切断芸術運動』で起きています。

つまり《切断》と言いながら、切って左右入れ替えると、不思議な事に10階建てのような《芸術》が出現してくるのです。

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話が難しくなっていますが、

切断芸術は10界あって、今までの単界や2界、3界、4界の《芸術》とは違うものになっています。

さらには《様態》というのは、作品の温度ですが、これが《高温プラズマ》化して、さらには《超高温プラズマ》になっています。

つまり、世界が新しく、複雑になったように、《芸術》もまた、新しい時代になって来ているのです。

 逆三角形型の【文明】と切断芸術 

今日の《文明》は、天地がひっくり返った逆三角型の形をしています。

民主主義であるからとも言えますし、そして大衆社会だからとも言えます。

そうした「さかしま」という逆転に時代になると、不思議な事に10階建ての深さと暗さのある芸術作品が出現してきているのです。

この10界の《芸術》を作り出す技法の一つが、切断なのです。

芸術ではないものを切断して、左右を入れ替えて結合すると、10界の芸術が生まれるのです。

 

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